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小耳症(永田法)の軌跡と新たな出発

永田小耳症形成外科クリニックは、院長・永田悟医師の逝去にともない、令和4年1月に閉院いたしました。このブログと、永田法による小耳症手術は次世代に引き継がれ、現在も行われています。小耳症手術をご検討の方は、ぜひご覧ください。

やはり作り直しの昨日の手術は、時間がかかって


夜遅くなってしまった。


 


小耳症手術のうちでも作り直しとなると


最も困難な手術となり、


肋軟骨フレームの耳の形が出来て、


それをカバーする組織の不足を補うために


色々な苦労が多く、


一見、終わりそうに見えてからが


さらに長時間かかってしまう手術だ。


 


12時間もの長丁場となって来ると、


最低2回は休憩をしないと、体が持たない状態となる。


しかも、低血糖になると、細かな精密さが要求される手術なので、


必ず食事を定期的に取らなければならない。


低血糖では手が震えてうまくいかない。


 


かつてのタンザー法の小耳症手術は、1時間から2時間手術だった。


それだけの結果しかえられない方法だった。


 


それが永田法では8時間手術となった。


さらにローヘアーラインに対する手術法が可能となり、


10時間手術となった。


ついにはその方法を応用して、作り直しも可能となり、12時間手術となった。


体力も忍耐力も技術力も芸術的センスも必要となった。


今や小耳症手術は、完全にメイジャー手術だ。

DSC03445.jpg

術前の状態,他の病院で作られた耳は、まず場所が間違った位置に、


特に、耳の上半分は耳の細かな輪郭が無い。


正常な場所より前に作られていた。


正常な耳はもみ上げとは離れた場所にあるべきなのだが


耳が、もみ上げに接して作られてしまっている。


術前に、毛を剃っているのでわかりにくいが、


耳の上方前面からは髪の毛が生えていた。


耳の後ろの皮膚は色が異なる黄色っぽい色の皮膚を


足の付け根部から移植されていた。


しかも、そこからは、陰毛が生えていた。


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胸の右側には、他の病院で肋軟骨をとられた9センチの傷が残されていた。


今回は作り直しのため、左から3センチの傷で肋軟骨を摘出する。


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他の病院でとられた肋軟骨の部分は、肋軟骨が再生されていないので


右側が抑えてみるとへこんでいるのが、わかる。


当院での採り方ではへこむ事は無い。


以前のこのブログ参照。


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たった3センチの切開線から摘出した4本の肋軟骨を傷の横に比較のために示す。


このように短い傷から肋軟骨をきちんと4本取り出すには、熟練を要する。


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耳の後ろの色の違う皮膚は切除した。使える皮膚だけを残した。


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左は、耳の型紙。真ん中は私が肋軟骨を組み合わせて作った3次元肋軟骨フレーム。


右は他の病院で移植されていた摘出した肋軟骨と


その後ろにあった色の異なる皮膚も、切除した。


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肋軟骨フレームを裏から比較したところ。


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手術直後の状態、正常な場所に耳が出来た。


耳が術前と比べるともみ上げから離れた場所に作られた。


再建した耳に毛は生えていない。


耳の上半分は頭から起こした血管膜でカバーして、その上に


耳の後ろから、あらかじめとっておいた色の同じ皮膚を移植した。


それでも足りなかった皮膚は頭から薄く採った皮膚を耳の外側に移植した。


また外耳道も拡張して正常な場所まで移動している。


作り直しの手術時間は12時間15分だった。



その1

このブログの写真は小耳症治療をご理解いただくために、参考資料として掲載させていただいています。
それぞれの症状によって、手術結果は異なりますのでご了承ください。

小耳症手術による合併症
一過性の顔面神経麻痺 浅側頭動・静脈の血行不良による植皮の生着不良 感染、移植軟骨の露出 気胸 術後肺炎
縫合不全 ハゲ 床ずれ その他
上記のような合併症が生じた場合は、症状に応じて対処致します。場合によっては再手術を行う可能性もあります。


その2

このブログの写真は耳介形成術をご理解いただくために、参考資料として掲載させていただいています。
それぞれの症状によって、手術結果は異なりますのでご了承ください。

耳介形成術による合併症
 感染、 縫合不全 その他
上記のような合併症が生じた場合は、症状に応じて対処致します。場合によっては再手術を行う可能性もあります。