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永田小耳症形成外科クリニックと愉快な仲間たち

愉快な仲間たちの秘密の会話

形成外科の最も真髄は、

組織を再建することにある。

体表の全てにわたる再建を行う科である。

ただ悪いところを切って縫い合わせる手術とは全く異なる。


簡単に、難易度順に説明すると、


やけどや、怪我で皮膚が欠損すれば、皮膚を移植する。

この手術は平面の再建である。


手の指が切断されて、指をなくした場合は、足の指を移植する。

この手術は、もともと指という同じ形のものを他から持って来て移植する手術である。



乳癌で乳房を切除された患者さんには

皮膚だけでなく、脂肪や筋体を含めたボリュームのある組織を移植する事で乳房を再建する。

この手術は、半球状の再建となる。


耳がない場合の再建では、耳とは異なる他の組織を使って

耳を0から作り上げなければならない。

手術の中で、最も創造度が高い手術である。


だから、あらゆる手技が必要となる。


正しい肋軟骨採取、

および肋軟骨の細工と組み合わせによる3次元耳型肋軟骨フレーム作成、

その立体的耳型にピッタリと合うような生きた皮膚の表面積を準備するための

症例ごとのデザインと皮弁形成。

耳型肋軟骨フレームを挿入移植するための皮下ポケット作成。

耳を立てる時は、耳を後ろから支えて立てるための肋軟骨ブロックの作成

それをカバーして生かすための生きた動脈弁「血管膜」の形成。

そして、その上に移植するための耳と同じ色の皮膚を頭から薄く採取。

最後に、皮膚移植。


と、いうように、形成外科領域のあらゆる領域に使われる全ての技術を駆使して

初めて、耳の立体構造が再建される。

耳の立体的構造を、前からも後ろからも、横からも上からも下からも

全て、理解しておかなければならない。


すなわち、耳を作る手術は、形成外科医にとっては

形成外科分野の技術の集大成が必要な分野であり、

しかも、体表の形態の中で最も複雑な再建となる。


だから、1年や2年といった簡単な修行では、不可能な分野である。

10年修行しても、物になる形成外科医はほんの一握りにもならない。

生涯を耳つくりだけに没頭するつもりでないと不可能な分野でもある。


更に、芸術的な能力が最も必要とされる分野だ。

これが、適性となる。


形成外科医にとっては、最も厳しいイバラの道でもある。

だからこそ逆に、やりがいのある仕事でもある。








本日、小耳症患者さんが2名無事退院となった。

それぞれに、2回の手術を済ませて耳が再建されての退院。


生まれた時から耳が無い状態で

幼児の時から予約を取って待ちに待ち、

10歳となり、

耳再建の手術日を迎える。

本人も両親も、緊張する時だ。


一回目の8時間の手術を受けて耳の表が完成する。

耳が出来上がっての退院。


更に、半年後、また8時間の耳を立てる手術を受ける。

そして本当に耳が30度の角度を持って立って晴れて退院となる。


10年もの長い間、耳が無かったのに、退院時は出来上がっているのだから、

患者さんはもとより、

ご両親の喜びも、ひとしおだ。


この時、私は、耳つくりの発展の仕事に生涯を尽くしてきて、

独自の手術法を開発した甲斐があったと感じる。

やりがいがあるからこそ

まだこの仕事を続けている。


明日は、2件の手術が予定されている。

「折れ耳」の手術と、「小耳症の耳立て手術」。


午前中に、2名とも入院となった。