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小耳症(永田法)の軌跡と新たな出発

永田小耳症形成外科クリニックは、院長・永田悟医師の逝去にともない、令和4年1月に閉院いたしました。このブログと、永田法による小耳症手術は次世代に引き継がれ、現在も行われています。小耳症手術をご検討の方は、ぜひご覧ください。

私が小耳症に対する耳介再建術の研究を始めてから

30年近くが経過しようとしている。

これまでに小耳症に関する手術法は世界に認められた学会誌に関する論文だけで

500以上もの論文数が報告されてきた。


その中でも主だった方法は、

1959年報告の「タンザー法」。1980年代の「ブレント法」。そして1992年報告の「永田法」だ。


30年前は、タンザー法による耳介再建法が世界中で主流だった。


1959年に、自家肋軟骨移植によるタンザー法が、

アメリカ形成外科学会誌に報告されて以来

タンザー法が世界の主流となっていた。

タンザー法は手術回数が、原法で6回、後の短縮した方法でも、手術回数が4回必要だった。


しかし、欠点として

「1」・耳の中央部と耳の後ろに、色が異なる皮膚を移植される。

「2」・大人になると色の異なる移植された皮膚から陰毛が生えてくる。

「3」・耳が30度の角度には絶対立てられない方法だった。

「4」・耳珠、耳輪脚、珠間切痕を明確に再建することが出来なかった。

「5」・10年20年30年の長期に渡り移植肋軟骨が吸収され再建耳が萎縮変形してくる。

「6」・重度のローヘアーラインの症例では、髪の毛が生える耳しか再建できない。

「7」・無耳症では、耳介再建が不可能。


ブレント法では4回の手術回数を要した。

しかしこの方法も、次の欠点を持っていた。

「1」・耳が30度の角度には立てられない。

「2」耳珠、耳輪脚、珠間切痕を明確に再建することが出来なかった。

「3」正常な耳から皮膚耳介軟骨を採取して耳珠形成のため利用するために

   結果的に、正常な耳が倒れてしまう。

   再建した耳が立てられないので、むしろ正常な耳を倒してしまうことで
   
   左右対称にしようという、居直った方法である。

「4」だから、両側小耳症には対処できない方法だった。

「5」無耳症には対処できない。


タンザー法や、ブレント法では、不可能とされていた上記、前述のすべての欠点を解決し、

永田法では、基本的に2回の手術で

正常な耳が再建できるようになった。


また、永田法では、

タンザー法やブレント法で、作られてしまった不完全な耳の作り直し手術ですら

2回の手術で、完全な形態を持つ耳へと再々建出来るようになった。


1992年から1993年にかけて

永田法の6論文がアメリカ形成外科学会誌に掲載されてから

現在にかけて、欧米をはじめとした医学先進国のみでなく

開発途上国にまで、永田法が浸透してきた。



更に2005年、2009年に、

アメリカ発行の形成外科テキストブックの「小耳症治療」は、依頼されて

永田自身が執筆している。


小耳症の発生率は、6000出生に1名という非常にまれな疾患のため、

日本程度の国であれば、1年間に毎年手術すべき小耳症の患者数は

日本では1施設で、ほぼ、十分な小耳症の患者数しかいないことになる。


私は、年間140件の小耳症手術を行っている。

言い換えると、小耳症手術を年間通じて毎週3件コンスタントに行っている。

1件あたりの平均手術時間は8時間を要するので

これ以上手術すると、体の限界を超えるギリギリの数になる。


再々建手術や、無耳症、ローヘアーラインに対する小耳症となると

10時間を越す手術となる。


まさに体力の限界まで、小耳症手術を行っている。

この25年は、夏休み、冬休みもなく、

この4年間は、毎日連続で、クリニックへ泊り込んでいる現状だ。




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2009年7月10日。耳垂残存型小耳症。
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耳があるべき場所を赤で示す。
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手術デザイン。
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作成した3次元肋軟骨フレーム。
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皮弁形成および皮下ポケット作成。
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3次元肋軟骨フレームを移植した。
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そして2010年2月5日の耳立て手術日となった。
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手術のデザイン。
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頭から薄い皮膚を採取した。
頭から生きた血管膜を起こした。
耳の後ろから支えて耳を立てるため肋軟骨ブロックを作成した。
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耳が立っている。
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耳が立っている。
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手術が終了した全体像。

その1

このブログの写真は小耳症治療をご理解いただくために、参考資料として掲載させていただいています。
それぞれの症状によって、手術結果は異なりますのでご了承ください。

小耳症手術による合併症
一過性の顔面神経麻痺 浅側頭動・静脈の血行不良による植皮の生着不良 感染、移植軟骨の露出 気胸 術後肺炎
縫合不全 ハゲ 床ずれ その他
上記のような合併症が生じた場合は、症状に応じて対処致します。場合によっては再手術を行う可能性もあります。


その2

このブログの写真は耳介形成術をご理解いただくために、参考資料として掲載させていただいています。
それぞれの症状によって、手術結果は異なりますのでご了承ください。

耳介形成術による合併症
 感染、 縫合不全 その他
上記のような合併症が生じた場合は、症状に応じて対処致します。場合によっては再手術を行う可能性もあります。