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小耳症(永田法)の軌跡と新たな出発

永田小耳症形成外科クリニックは、院長・永田悟医師の逝去にともない、令和4年1月に閉院いたしました。このブログと、永田法による小耳症手術は次世代に引き継がれ、現在も行われています。小耳症手術をご検討の方は、ぜひご覧ください。

小耳症手術を行うと、

手術後は、がっくりと体は疲労している。


特に、頭から血管膜を起こしてくる手術は、

微細な出血点のみを、逐一、電気メスで止血しながらの手術となり、

根気を要する手術となる。


肝心な血管の直径は1ミリ程度であり、

これを傷つけることは決して許されない。

皮膚への栄養血管として血管の本管から、0・1ミリの動静脈の枝が無数に出ており、

これらのみを、本管を傷つけないように、

逐一電気メスで焼かなければ出血は止まらない。


頭から採取する皮膚は、傷跡にならないように、

かすり傷程度の薄さ、

すなわち紙1枚の薄さで、正確にメスで採取しなければならない。

もし、厚く皮膚をとりすぎると、毛根を傷つけ禿になるので、

呼吸を止めてメスを進めなければ、手ブレを起こしてしまう。

これも、神経を要する手技となっている。


耳立て手術の際には、

手術台に横たわる患者さんの耳の後ろから

覗き込む無理な体勢で、非常に細い糸で200針ほどもの縫合を行わねばならない。

首と腰を、捻じ曲げながらの無理な作業なので疲労するのは当然のことだ。


小耳症手術では、事細かな、

耳の微細構造間のプロポーションが1パーセント誤差範囲で規定される。

肋軟骨を4本採取し、採取後にも胸が変形を起こさないように

すべての肋軟骨膜を、肋軟骨本体から、はがして生体に残さなければならない。

しかも、残した肋軟骨膜を、4ミリおきに細かな糸で再び縫合しなければならない。


4本の採取した肋軟骨から少なくとも

6個のパーツを作り、

医学用の細いステンレスワイヤーを使い、

85箇所もの固定を行い、彫刻等で削りながら

立体的な耳の形のプロポーションを作成する。

出来上がりが1パーセント誤差範囲のプロポーションでなければならない。

偏執狂的なほどの、正確さが要求される作業である。

材料が限られるために、やり直しは許されない。


この3次元の形とぴったりの形態を

生きた組織ですべてカバーできるように

設計することこそ、さらに、困難となる。


これらを実現するために、設計と彫刻の能力と、芸術性をも要求される。

また、厳しく過酷な緻密さの仕事を、8時間から10時間という長時間

妥協することなく緊張し続ける忍耐力が必要である。


手術後に肩がこったり、腰を痛めたりしないような

体力と、気力が必要だ。


芸術的才能が無い人には、決して向かない手術だ。